朝倉かすみ
思えば、この三年は小豆沢家にとって動乱の日々だった。ご存じコロナがあり、それに少なからず影響を受け、父が長年勤めた会社を辞めた。芙美が中一の秋だ。養生期間に入った父と、一家を支えざるをえなくなった母。今は父も日雇いながら社会復帰している。二歳下の弟・青龍は、家族で唯一勉学を得意とし、本好きの彼は気に入ったフレーズをノートに書き留めている。芙美はこの三月中学を卒業した。その先はもう決まっている。吉と出るか凶と出るかはわからないし、今はまだ考えたくない。
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