寺地はるな
あたしの名前は谷川愛里咲。まったく土地勘のないこの町に流れ着いてもう何年になるんだろう。前身がスナックの惣菜屋をやっていて、スナックのママの息子と結婚して、その夫は売れない小説家。ってこういう身の上を聞くと、みんな好き勝手にあたしの“不幸”を欲しがるんだよね。今回、町内会長からかんたんレシピを教えてって依頼されたから、いい機会だし、あたしのこともついでに話そうかな。